城跡に咲く花〜使用人×王女〜
ああ…、瓦礫が落ちてくる。

全てが終わる。

消えてゆく。


それを見上げながら、けれど不思議と、怖いという感情は湧いてこなかった。

まるでシーツに包まって眠りに落ちる夜のように、ユリアはただただ穏やかな気持ちで瞼を閉じる。


「………ユリアさま…」

「……ん…?」

「あなたに出逢えて…幸せでした……」


耳元で囁かれた声に切なくなって。

背中にまわした手に力を込めて、ぎゅっと彼にしがみついた。

「……わたしもずっと…幸せだったよ…」


ああ、いつか…。

どうかいつか、また出逢えますように。

今度もきっとまた彼のそばにいられますように…。


あたたかな腕の中で、強く強く、そう思った。


それがユリアの最後の記憶となった―――
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