この運命を奇跡と呼ぶならば。

「昨日、私の痣を見た人は?」

「僕たちは、全員見たよ。」

「そう…なら、話は早いわね。」

桜は少し悲しそうに目を伏せたが覚悟をたたえた目で力強い声で昨日のことを語り始めた。


「昨日のあれは、力の代償なのよ。私は、治癒能力を使い他人の傷を癒すことが出来るわ。でも、タダで癒すことは出来ない。人を癒すことの代償は己がその痛みを受けること。それも何倍にも膨れあがって還ってくるわ。満月の夜、額の蕾から蔓が広がる。その蔓が体を締め付けるわ。」


そこまでいうと、一度言葉を切り周りを見渡すと静かに目を伏せた。


「桜ちゃん。どうして…」

沖田の小さく呟くように言った言葉に静かに答えた。


「大事だからよ。大事な人になったから。大事な人達を助けたいと思うのは、当然でしょう?」
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