この運命を奇跡と呼ぶならば。
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「……総司…。」



部屋を追い出された桜は暫く呆然と部屋の前の廊下に立っていたのだが、漸く沖田の言った言葉の意味を理解し、そして、彼の苦しそうな辛そうな表情を思い出しその場に座り込む。


「……どうして、あんな顔で…。」


自分がこの世で一番愛しいと、恋しいと、慕うただ唯一の相手から愛していると言われた筈なのに、浮かぶ想いはただ一つ。


──────カナシイ。



酷く、かなしいのだ。

哀しくて、悲しくて、愛しい。


愛する相手を置いて行くことも、愛する相手に置いて逝かれることも。


彼女は夜空を見上げ、月が滲んで見えることでその時初めて自分が泣いていることに気付く。


満月に近いが満月ではない。少し欠けた歪な月が空に輝き、静かに涙を流す彼女を照らしていた。



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