301号室、302号室、303号室




亮太は、タバコの火を消した。




よくあるクリスマスソングと、ポータブルゲーム機から流れる音が混ざり合って、頭が割れそうだ。


なんだこの、殺伐とした部屋は。


クリスマスイブだっていうのに、カップルが二人きりでイチャイチャできる、一大イベントだっていうのに。

この男ときたら・・・



「隣の部屋の、302だかに住んでる子が超タイプでさ、俺的になんだけど。あ、でも全然美人とかじゃないんだけどーなんつーか、雰囲気っつーのかな。すげーいいなあと思うんだけど、彼氏とかいんのかな。」



うるせーっつーの。
彼女の前でこんな話するか普通。


ピピピッ
ピピピッ


携帯のアラーム音。

それは、11時からバイトがある彼が、家を出る時間を知らせるためにいつもセットしているものだ。

はぁ・・・

やっとこの重苦しい空気から解放される。



と、思ったのも束の間。



「じゃあ、俺バイトだから、後はお前ら、適当にやってて」


「分かった。」



ソファーの上でゲーム中の三木くんが、当たり前のように返事をする。

え?うそ。

普通、彼女と違う男、部屋で二人っきりにしたりとか、します?


いや、こいつに普通を求めること自体、間違いなのだ。



ちょっとちょっと、待ってよ。
気まずいから二人っきりにしないでよ。

目配せだけで、ジャケットを羽織る彼の背中に必死に訴えかけるけれど、全く通じず。


ばたんっ

と、重々しく、扉が閉められた。



気分を上げるために流していたクリスマスソングも消され、部屋には三木くんがやるゲームの音だけがひたすら流れている。




中村栞



ハタチの冬。



何やら波乱が巻き起こりそうな予感。




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