クール上司と偽装レンアイ!?
しばらくして私が落ち着いたのを見ると、葵が「腹減った」と言い出した。

時計を見ると、もう8時を回っている。

手をつけていない料理は机に綺麗に並んだままだ。

「ごめん、私が泣いたりしたから……料理冷めちゃったね」

「彩のせいじゃないだろ? それに冷めても食べられるのばっかだし……あいつこうなる事計算してたんじゃないだろうな」

「ありえるかも……藤原さんの事だから」

葵はメニューを見て、温かい汁物等3点を追加注文した。

来るまでの間、藤原さんが頼んでくれていた蟹のサラダ等に箸を伸ばす。

私達の間の空気はもうすっかり柔らかいものになっていた。

意地を張るような気持なんてもう少しも無い。

「葵から見て私って何がダメだと思う? さっき教えてくれた事以外で」

自然にそんな言葉が出て来る。

葵は努力してるって褒めてくれたけど、相変わらず別府課長の評価は低い私だし、客観的な原因を知りたかった。

「まずケアレスミスが目立つな」

「そうだよね。気を付けてるつもりなんだけどな……」

「確認作業は落ち着いてやるようにしろよ。彩は率先して電話に出るけど、作業中は誰かに任せろ」

「うん、そうしたいけど、でも誰も出ないから。あまり待たせたら相手に悪いでしょ?」

「そう言われてみればそうだな……周りも彩に甘えてるとこ有るよな。別府課長は数字に出る部分ばかり評価するけど、それも問題だよな」

葵は独り言の様にブツブツ言いながら怒ってる。

私の事なのに自分の事のように怒ってくれる。

なんだか幸せな気持になった。

自然と笑顔が浮かんで来る。
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