クール上司と偽装レンアイ!?
「眠れないのはその事が関係しているの?」

「……藤原に聞いたのか?」

葵の声が低くなった気がして、私は慌てて否定した。

「違うよ。私は噂で聞いただけなの、だから具体的な事は何も知らないから心配で……」

葵は小さく息を吐いてから、私の身体に回していた腕に力を込めて更に引き寄せて来た。

「彩の聞いた噂は俺が問題起して、本社から横浜支社に飛ばされたって話だろ?」

「……うん、信じてるわけじゃないけど」

「いや、本当の事だ。噂も結構あてになるんだな」

こんな話なのに、葵はどこか面白そうに言う。

「葵が異動になる程のミスするなんて信じられない」

「俺だってミスくらいする」

「でも……私見た事ないよ。本社に戻って来てから何か失敗した事有った?」

葵の完璧さはアシスタントで目の前の席の私が、誰よりも分かってると思う。

「4年も前の話だからな。俺も成長したんだよ」

「でも……」

「とにかくその事はもう済んだ事で俺は気にしてない。眠れないなんて言って心配かけて悪かった。でも大丈夫だから」

葵は私に言い聞かせるように囁く。

私はどうしてか納得出来ない気持だった。嘘は言われて無いけど一番肝心な部分を誤魔化されてしまった様なそんな気がした。

でも、それ以上追及する事は出来なかった。
葵はその出来事に触れたく無いんだって感じたから。
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