嘘つき偽彼氏


「あ、えっと……大丈夫です」


あたしは目を細めてその人を見上げる。

すると、その男の人の笑う声が聞こえた。


「はは、俺のこと睨むほど迷惑だった?」


なんて、楽しそうに言ってきた男の人。


は?何言ってんの?
その言い方はちょっと失礼なんじゃない?


あたしは今日、好きな人が中学生だと知り
そのうえ、今日は弓道場に居なかったことが重なり、結構落ち込んでいたわけで……


その挙げ句、知らない男の人にちょっとひどい事を言われて……


ムカつかない人なんていないんじゃない?


そう考えたあたしはその人の胸ぐらをグッと掴み、自分の顔に近づける。


「女の子にそんな事言ったら誰にも相手にされないよ」


近づけた男の人をキッと睨みつけてそう言ってやった。


でもそのとき、太陽が雲に隠れて
その人の顔がはっきりと確認出来てしまう。





「え………………?」


自分の口からバカみたいに力が抜けたみたいな声がする。


あたしは驚きのあまり、
その男の人の胸ぐらを掴んだまま硬直してしまった。






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