たったひとりの君にだけ

「……でも」

「はい?」

「でも俺、嬉しかったんですよ」


何かを言いかけたメガネ君に、イラッとするであろう声で聞き返すと、戻って来たのは意味不明な発言だった。

切り替え早く、怖気づいた様子は既にない。


「あの充から、好きな人出来たって話聞いたこと。で、ようやく写メ見せてもらって、充が言ってた通り綺麗な人で、しかも自分の店で本人に会えて、かっこよくて。嬉しかったんです」


そう言った彼の顔は、数分前に奥さんの話をしたときのように、穏やかで、優しくて。
面と向かって綺麗と言われたことなんかどうでもよかった。


「……別に私、絶滅危惧種じゃないんですけど」

「それに匹敵するレベルです」


なんだろう。

一瞬で落とされた気分だ。

すると、キオナのド派手メガネ君は、続けてこう言った。




「……それに、俺、充には幸せになってほしいんです」




顔だけじゃなく、声色も。
穏やかで、優しくて、こんな私でもその言葉が本心だと容易に見抜けた。


「大学の頃から、いろいろ迷惑掛けたし世話になったから」

「……そりゃ、親友には幸せになってほしいですよね。わかりますよ」


瞬時に瑠奈の顔が浮かぶ。

あの、涙に濡れたぐちゃぐちゃな顔を。
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