たったひとりの君にだけ

「……高階君こそ、お土産なんていつでもいいんだよ」


急を要するような代物じゃない。
今すぐここに来なければならないような理由なんて何処にもなかったのに。
実は大学時代に食べたことがあるなんて絶対に言える雰囲気じゃない。


「俺だって本当は今日会えるなんて微塵も思ってなかったですよ」

「はっ?」


思わず素っ頓狂な声が飛び出た。

なんだろう。
言っていることとやっていることが大きく違っているのは気の所為だろうか。


「会いたいなとは思ってたけど、いないだろうなっては思ってて。99.99999%ダメもとでメールして、ダメもとで尋ねてみたらドアが開くんですもん、こっちがびっくりしました」


そう強気に言い放つのは、今から行くと電子文字で連絡した後の行動だったからなのか。
そして、勝ち誇った雰囲気さえ醸し出すのは、突撃自宅訪問ではない、自分に非はないと無実を訴えているからなのか。

だけど、びっくりしたのは絶対にこっちだ。
メールの後、数分どころかたかだか秒針が一周したところで来るなんて、一体何処の誰が想像出来ただろう。

非常識というワードは使わなくても、私の理解の範疇を超えた人物であることは間違いない。(そんなの最初からわかってたことだけど)

年末年始。
近所のスーパーや行き着けTSUTAYAの店員には会えど、引き篭もる以上知り合いに会うことはないと信じていた。


私はただ、自分のホームで寝込んでいただけだ。


「……だって私の家だもん。ずっといるわ」

「実家には帰らなかったんですか?」

「……帰る、って、何処に……?」


そう口にした瞬間、しまった、と思った。

思わず漏れた一言に自分が一番驚いていた。
こんなこと、言うつもりじゃなかったのに。

体調不良で弱気になっているだけだと自分に強く言い訳するしかなかった。
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