天然白雪-天然は悪気がないぶんたちが悪い-
それを聞きつけて、ある日、あの王子様が訪ねてきました。
彼は長い間、ずっと白雪姫を探し続けていたのです。
王子様は悲痛な面持ちで、白雪姫に優しいキスをひとつおとしました。
すると、スと目をゆっくりと開き、白雪姫は深い眠りから目覚めたのです。
「おぉっ! 白雪姫がっ、白雪姫が生き返ったぞっ!」
「良かった…、良かったっ!」
小人たちは泣いて喜びました。
「白雪姫…」
起き上がった彼女をふわりと王子様は抱き締めました。それを白雪姫も抱き締め返します。
いい雰囲気の中、あっ、と白雪姫は突然声を上げました。
「どうかしたかい?」
「王子様…、カツラがずれていますわ」
「…」
ニコッと笑ってその雰囲気を自身でぶち壊しました。小人たちもつられて王子様のカツラを見ましたが、なかったことにしました。
「…」
王子様は無言で白雪姫を離しました。ですが白雪姫はふふっと微笑みます。
「王子様、そんなに落ち込まないで? 私は髪があってもなくても、貴方のことが好きですから」
「…っ、白雪姫っ!」
王子様は感激のあまり泣きそうになりました。その様子を小人たちは苦笑まじりで見守っていたのでした。
そうして、小人たちと別れの挨拶を告げ、ふたりで彼のお城に向かいました。白雪姫と王子様はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
「ねぇ、もう外でカツラつけなくてもいいのでは?」
「しかし…」
「みなさんそんなに気にしないと思うわ」
「…」
こんなやりとりは彼らにとって、日常茶飯事です。
【END】