あたしの心、人混みに塗れて
あたしはあぐらをかいてテレビを見ている蒼ちゃんの耳たぶをひたすらいじっていた。


「とも、ほんと俺の耳好きだねえ」


寝ている蒼ちゃんのピアスの跡に触れて以来何度も触っているもんだから、蒼ちゃんはもはや呆れながらあたしにされるがままになっていた。


指の腹に黒い跡が触れる。


「ピアスの跡ってすぐには消えないんだね」

「あんまり目立たなくなったけどねー」

「ねえ蒼ちゃん、一個言っていい?」

「何ー?」

「ピアス、一回外してみて」

「え?」


意外そうな声が返ってきた。


「ちょっとの間でいいから」

「いいけど……最近のともがよくわかんない」


もしかしてあたしは耳フェチなのかもしれないとは言わなかった。


蒼ちゃんが耳についているピアスを外していく。どこかに向けているわけでもないその視線や小さなピアスを摘む指が蒼ちゃんの魅力を引き立てている。あたしはこの間の蒼ちゃんがたまらなく好きだ。


ピアスを外した蒼ちゃんは、テーブルの上にピアスを置いた。


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