あたしの心、人混みに塗れて
「ねえ、相模さんて、川島くんと仲いいわよね」


渡辺さんの話し方が、あたしは苦手だった。常に人を問い詰めるような、強い口調だからだ。基本臆病なあたしは、それだけで泣きたくなる。


「仲良いというか、まあ、一応同じ高校だったし……」


やっぱり、蒼ちゃんの話か。


まあ、高校のみならず幼稚園からずっと一緒だけど、とは口にしなかった。


でも、あたしに何の用だろうか。あたしと蒼ちゃんが幼なじみということは、大学じゃ千晶以外知らないはずだ。


あたしは気まずい空気に耐え切れずに、グレープフルーツサワーに口を付けた。できることなら逃げ出したい。それができないなら、この二人がさっさと蒼ちゃんの元へ行ってもらいたい。


あ、それは更に腹立つから他の男にしてもらいたいけど。


「付き合ってるの?」

「いや、全然」


あたしの片思いです、とはこれも口にしなかった。余計なことを話したら、コース内の噂になることは必至だ。あたしは静かに暮らしたいのだ。


「じゃあ、この間のキスはなんだったの?」

「……え?」


……キス?


どきりとした。


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