Under The Darkness



 だから、余計に得体の知れない心地がして、岸壁に足を踏み出すような恐ろしさを味わった。

 私自身が彼の手により変えられてしまうことが、何より怖かった。


 京介君は、最後まで私を翻弄し尽くし、悦楽の海に深く沈め――そして、私の矜持を打ち砕いたんだ。

 豪のように己の本能のまま乱暴をされた方が、まだマシだったかも知れない。

 身体は自由にされても、こんな卑劣な男に心までは犯せはしないと、そう思い自分をなんとか保っていられたから。

 でも。


「嫌だと思っていても、美里さん、貴女の身体は嫌いであるはずの私の手で溺れてしまった。貴女はもう被害者ですらない。これから美里さんは、私の手で、色欲に溺れるただのオンナに成り下がるのです」


 心が、矜持が、粉々に砕かれる。

 パリンと薄いガラスが砕け散るようにして、私を守るものが取り払われなくなってしまう。

 剥き出しになった心が、京介君の牙で傷つけられる。

 心を保っていられなくなる。


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