Under The Darkness






 再び目を覚ました時、まず目に入ったのは真っ白な天井だった。


 視線を横に動かすと、そこも白い壁。


 そして、私を見つめるたくさんの目。


 ――……ここは、病院……?


 私は目の前の医者に、京介君の具合はどうなのか確認しようと口を開けた。


「……、……っ!?」


 でも、私の口からは声が出なかった。 

 京介君はどうしたのかと聞きたいのに、声が出ない。

 話したいのに私の口から出るのは掠れた空気ばかりで、言葉が全く出てこなかった。

 ベッドの周りを取り囲むようにして、包帯を巻いたお父さんや悠宇、栞ちゃんの姿があって。

 お医者様や沢山の看護師さんが目を開けた私の身体を触っていて。

 口を必死になって開くんだけど、誰にも聞くことが出来なかった。



 私――――声を失っていたんだ。




 たった一言、たった一言でよかった。


 ――――京介君はどこ?


 短い一言が、私の口からは出てこなかった。

 その事実に愕然とした私は、取り乱し、暴れた。

 けれど、誰も、なにも、教えてはくれなかった。


 不安で、不安で――――。


 私は、すぐにでも探しに行きたかったのに。

 取り乱す私に、包帯まみれのお父さんがポツリと呟いた。


『美里ちゃんだけでも無事でよかった』って。


 私はその言葉を聞いて、目の前が真っ暗になった。

 これ以上の絶望って、きっとないだろう。



 ――――私だけが無事?

 それはどういう意味?

 京介君は?

 京介君はどないしたん?

 誰か教えて。

 なあ、お願いやから――――!!



 聞きたいのに、やはり私の喉からは乾いた空気が漏れるのみで。

 焼けるような焦燥に身体が焦げ付きそうだった。引き裂かれるような不安が津波のように押し寄せてきて、気が狂いそうになる。

 私は必死で父さんに縋りついた。


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