Under The Darkness






「京介、美里ちゃん、今から行くって?」


 お父さんの声に、京介君、機嫌の良い笑顔のまま「はい」と答える。お父さんの目が私に向いて、


「美里ちゃんは、馬淵の家に帰って来てくれるんだよね? ね?」


 懇願するような震える声にウッと言葉に詰まってしまう。

 だけれども。

 私は京介君の方を見ないようにしながら、自分の主張を口にした。


「お父さん、ごめんなさい。私、大阪へ戻ったらここへは戻りません。新しい学校にも行きません。元居た学校に戻りたいです。家も放っておかれへんし、バイトだって続けたいです。撮影で東京に来ることがあったら遊びに来ますんで」


 お願いします、と頭を下げた。

 すると、隣で私を見下ろしているだろう京介君の気配が変わった。それはもう明確なほどに、がらりと。


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