Under The Darkness



『……なんですかね。胸がイタいですね。美里さんはあの組長の子供とは思えないほどに危うい。僕は少し、貴女が不憫に思えてきました』


 田村さんは意味不明な言葉を発すると、


『では、お早いお戻りを』


 淡々とした口調でさっさと電話を切ってしまった。

 スマホを握りしめながら、私はホッと安堵の吐息を吐く。

 田村さんの言葉は引っかかったけど、でも、お父さんが話せるくらいにまで回復していると知ることが出来たから。


 ――ホンマに酔ってるみたいな口調やったけど、あれは後遺症のせいってお医者さんの田村さんが言うてたんやから間違いない。脳に障害が残ってもうたなんて……お父さん、可哀想に……。


 私は、すぐにでも悠宇と栞ちゃんに会い事情をちゃんと説明して、早くお父さんの所へ戻ろうと思った。

 一刻の猶予もない。

 京介君にお礼を言ってスマホを返し、私の背後にいる集団に目を向けた。


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