Under The Darkness




「ほんなら、私を助けたんは、京介君が自分の手で私を傷つける、ため……?」


 まさかという疑念。そして、そこまで憎まれていたのかという絶望。

 違うと言って欲しいと、縋るような目で見てしまう。

 でも、その願いは呆気なく打ち砕かれてしまった。


 ――その通り。私がお前を傷つけるため。


 平坦な口調で、感情を消した顔で、私の中にあるものを引き摺り出し曝《あば》こうとするような目で、京介君は憎しみの言葉を紡ぐ。


「お前の中に、あの男の忌まわしい記憶があることが許せない」


 ――傷つけていいのは、壊していいのは、私だけ。私だけだ。


 悔しげに歯噛みしながら、京介君は憎々しいと言わんばかりに吐き捨てる。


「アンタが何しても、私は傷つかん。アンタになんてなにも壊せへん、壊させへん!」


 京介君に言い放つ私の声が、無様なほどに慄えていた。

 頭の中で赤信号が点滅してる。

 私の直感が告げていた。


 ――過去何度も味わった忌まわしい経験が、再び牙を剥く、と。


「はっ、貴女に何ができる? 無力なくせに」


 その言葉にカッとなって、京介君の頬を思い切り平手で打った。

 そんなこと……言われなくてもわかってる。


 無力だから、私は――――――。


 「……私はアンタが嫌いや」


 精一杯瞳に力を込めて、私は京介君を睨み上げた。

 腕力や体力では私ははるかに劣るけれど、意志の強さは絶対負けないと訴える。

 京介君は打たれて赤く染まった頬を指先で撫で上げ、侮蔑の混じる目で私を見下ろした。


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