この恋、国家機密なんですか!?


後方に突き飛ばされる。

視界の端に、赤い虫が羽を広げて飛んだのが見えたような気がした。

転ぶ前に高浜さんに支えられる。

目の前では、宗一郎さんが、私の代わりに右肩から血を流していた。

かたりと、彼の手からピストルが落ちる。


「篠田!」


高浜さんのバリトンボイスが響く。

彼は片手で発砲し、宗一郎さんを撃った敵の銃を落とした。


「や……っ、宗一郎さん……!」

「……っ……そんな死人を見るような目をするな……っ」


大丈夫だ、と言いたいんだろう。

駆け寄ると、宗一郎さんはふらりと私に寄り添う。

それでも、口の片端を上げて笑っていた。


「こんなことで死にはしない。あきらめたりも、しない」


宗一郎さんはピストルを左手で拾い上げると、私の頭を抱き寄せる。

そのまま、その銃弾を敵の武器へと叩き込んだ。


「お前にまで死なれたら、俺の人生真っ暗じゃないか。それに……」


素手で向かってきた敵を、長い足で蹴り飛ばす。


「俺はものすごく怒っているんだ。あいつら、お前を縛りつけやがって……」


そうそう、縛りつけやがって!

って……何か違う気が。


< 179 / 214 >

この作品をシェア

pagetop