この恋、国家機密なんですか!?


なにそれ。

やめれるものなら、今すぐやめたいよ。

次の仕事が見つかるまで、なんて言わないで。

援助なんて言葉、いったいどこから出てくるの?

ひどい……。


「……宗一郎さん……私は、いったいあなたのなんなの?」


ずっと、面倒見てくれるって、そう言ってくれたら。

宗一郎さんのお嫁さんにしてくれるって、そう言ってほしいのに。

情けなくて、涙が溢れてきた。

鼻をすする音が聞こえたのか、宗一郎さんは黙ったまま。


「本当にお仕事なの?宗一郎さん、本当は……」

『本当は……なんだ?』

「他に彼女とか、奥さんとか、いるんじゃないのっ?」


ストレートに聞くと、宗一郎さんはまた黙った。

ドキドキと暴れる胸。

そうだよって言われたら、どうしよう……。


自分で聞いたくせに、不安がつのる。

やがて聞こえてきたのは、かすかにいら立ったような声。


『……いるわけないだろ』


希望通りの否定の言葉だったのに、私は笑えなかった。


怒らせちゃった……。


何も言えなくて、ただ泣いてばかりいると、やがてむこうから大きなため息が聞こえた。


『すぐに行けなくて、すまない。とにかく知り合いに、行ってもらうようにするから』

「ま……っ」


返事をする前に、電話は切られてしまった。








< 29 / 214 >

この作品をシェア

pagetop