ラスト・ジョーカー



 ゼンの目がそう言っているように、エルには見えた。


エルも小さく頷き返して、男めがけて走り出そうとする――が。



「そこのガキはサイキックか」


 男がゼンを指差して言った。



「おまえらがここまで登ってくるときに、そのガキの周りが青く光ってるのを見た。そのガキがPKで運んだんだろ」



エルがピタリと動きを止めると、男はにやりと笑って懐から紙きれを取り出し、足下の床に貼り付けた。



 すると、その紙がほんの一瞬だけ青く輝いた。


それを見たゼンが「しまった」と小さく呟いた。



「どうしたの。あれは何?」



 小声で尋ねるエルに、「魔除け……みたいなものだ。これでこの空間ではPKを使えなくなった」と、ゼンは答えた。



「そんな……」



「くそっ、どうやって手に入れたんだ。あれは〈トランプ〉だけが……」



 ぶつぶつと言い続けるゼンに構わず、男は今度はエルの足下になにかを投げてよこす。



「なに……手錠?」



「異形の両手首にそれをかけてこっちによこせ。異形と引き換えにガキを返す」



< 150 / 260 >

この作品をシェア

pagetop