ラスト・ジョーカー



「PKを使いすぎて、亡くなったの……?」



「PKは、言い換えるなら『生命力』みたいなもんなんだ。一度に大量に使いすぎると死に至る」



「そうまでして、ゼンを救いたかったのね……」



「こっちはいい迷惑だ」



 どこか冷めた口調でそう言い切ったゼンに、エルは驚いた。


母親が自分の命と引き換えにゼンを救ったというのに。



「そんな風に言わなくたって……」



「迷惑だ。頼んでもないのに人を勝手に不老不死にして、自分は先に逝った。……そんなことして、おれが喜ぶとでも思ったのかよ」



 その、痛みをこらえるような表情。

そんな顔を見せられたら、もう、エルに言えることなどあるはずもなかった。



「手記に『秘術を解く鍵は地下室に』とだけ書いて死なれて、災害が終わってから地下室に行ってみたらもぬけの殻だった。

地下室に何があったのか知っていたのは母さんだけだったから、調べようにも方法がなくて、そのまま二十年、三十年が経った。

自分をおいて、兄も親戚も友達もみんな年を取っていって、……そのまま皆死んでしまうのかと思うと怖くて、おれは旅に出ることにした」



「秘術を解く鍵を、探しに?」



「いや、とくに目的はなかった。どうせ死なないなら世界一周くらいしてみようかと思って。

なんでもいいから、誰もおれを知らない、おれが知ってる人が一人もいないところに行きたかった」



「そう、なの……」



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