ラスト・ジョーカー

*第五章 二人のひとりぼっち 4*



 一歩足を踏み出すと、ひんやりとした砂の感触が裸足の足を包み込んだ。



 それを軽く蹴飛ばすと、細かな砂が夜の空気にきらきらと舞う。



「なんだか、砂の感触がすごく懐かしい気がするね」



 エルがそう言うと、隣でゼンが小さく笑った。



 アレンの手引きで〈トランプ〉本部から逃げた二人は、夜明けと共にエリア〈シロガネ〉を出たのだ。



 スメラギの勧めで、二人はこれからエリア〈ヨザクラ〉を目指すことになった。


そこに〈トランプ〉のAがいるらしいのだ。事情を話せばもしかしたらAがゼンを匿ってくれるかもしれない。


さすがに芽利加もAには手出しできないだろう、とのことだ。



 アレンはエリア〈シロガネ〉の〈トランプ〉本部に残った。


局長をあのまま放っておくわけにはいかないからね、と少し寂しそうに笑ったアレンは、しかしどこか吹っ切れたような晴れやかな表情をしていた。



 真っ白な砂の雪原の上を、続く足跡が二つ。


初めてエリア〈ユウナギ〉を出たときのように、二人は無言でただ歩いた。



 歩き続けて、やがて太陽が真上に昇った頃。



「このへんで、休憩にしよう」



 ゼンがそう宣言して荷を置くと、転がっていた‘大岩に背をもたれて座った。


エルもその隣に腰を下ろす。



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