ラスト・ジョーカー



 律儀に答えたカンパニュラに、ゼンは心底うさんくさそうな顔をして、そうか、と言った。



 そして、もう話は終わりだとばかりにカンパニュラに背を向けると、エルの腕をつかんで、


「ほら、行くぞ」

 と言った。



「行くって、どこへ?」



 エルが尋ねた。エルのほうを見もしないまま、ゼンは答える。



「〈境界〉の向こう。エリアの外だ」



 答えを聞いたところでよくわからなかったエルは、背後に遠ざかるカンパニュラを振り返った。


それを察したのか、ゼンも立ち止まって振り返る。



「ワープで〈トランプ〉のカードどもから隠してくれたのには礼を言う。

せいぜい良い旅をしてくれ。……じゃあな。もう会うこともないだろう」



 一方的に別れを告げられたカンパニュラはしかし、ふふふ、と笑うと、


「それはわからないわ。縁というものは人の予想を越えて人を繋ぐものだから。

……でも、そうね。今のところは、さようなら」


 そう言って手を振った。



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