ラスト・ジョーカー

*第三章 銀の鈴 4*



「ねー、エルちゃんさん」



 ゼンの姿が見えなくなってしばらくして、アレンが声を上げた。


呼び方がすこし変だったが、エルはそこには触れず、「なに?」と返す。




「あのさー、エルちゃんさんはさー、ゼンの旦那とどういうご関係? 主従なの? もしかして恋人だったりしちゃう?」



 もしゃもしゃと干し肉をかじりながら、アレンが訊いた。



 エルは苦い顔をして、「えっと、じつはあたしにもよくわかっていないんだなー。まあ、恋人ではないとは言える」と答えた。



「わかんないの?」



「うん。べつに、ゼンがあたしのご主人ってわけでもないし、かと言って友達ってのも違うと思うし。

あたしはただ、旅についてきてほしいって言われたから、ついていってるだけ」



「ふーん。エルちゃんさんは、本当は旦那のとこ離れて他に行きたい場所とかないの?」



 そう訊かれて、浮かんだのはスメラギの顔だ。

多少の不自由はあるが快適な生活を提供するとエルに言った男。

〈トランプ〉の日本支局局長。



「ないわ」



 頭の中に浮かぶ顔を振り払うように、エルはふるふると首を振った。



「ほんとはね、ゼンについていかなくても行く当てはあるの。でもあたし、こっちの方がいい。

あたしは快適な生活なんかよりも、広い世界を見たい。すこし大変でも、自分の足で歩ける今の生活が好き」



 それに、ゼンはあたしを化け物として見ないもの。

と、エルは内心で付け加えた。



< 81 / 260 >

この作品をシェア

pagetop