ラスト・ジョーカー



 言葉がとめどなく胸の内にあふれて止まらない。



 愕然として固まっているエルの耳に、そのとき、大勢の悲鳴が届いた。


ゼンの結界が解けて、モウセンゴケが隊商の人々に魔手を伸ばしはじめたのだ。



(それが狙いか)



 結界を作っている者を消せば、より多くの「餌」にありつけるとわかったからか。



 砂漠モウセンゴケの蔓が隊商の子供を捕らえ、それに追いすがって母親が叫ぶ。


男たちは皆手に武器を持って闘うが、己れの数十倍も大きな化け物相手に敵う者はない。



「やめて」



 エルは無意識のうちにそう呟いた。



 唐突に、なにか激しいものがエルの中を突き抜けていった。


赤く燃え盛る焔のようなそれは、怒りなのか、焦りなのか。


いずれにせよ、激情であったことに変わりはない。


それは一瞬でつま先から脳天まで駆け上ってエルを灼いた。



「いやああぁあぁああああぁぁ―――――!!」



 悲鳴のような、断末魔のような、雄叫びのような。


そんな声を上げながら、エルは腕に絡むモウセンゴケの腺毛に噛みつき、――己れの腕の肉ごと、それを噛みちぎった。



< 98 / 260 >

この作品をシェア

pagetop