愛を知る小鳥
バタンッ!

荒々しくドアを閉めると、潤は目的の場所へと全力で駆けだした。途切れ途切れながらも言われた目印を頼りにその場所を探す。やがてビルの隙間で蹲って小さくなっている女性の姿が目に入った。

「…っ、香月っ!!」

声の限り名前を叫び、早く早くと足を前に投げ出す。息を切らしながらようやく目の前まで辿り着いたが、彼女は何の反応も示さない。

「香月っ!」

美羽の肩を掴むとその顔を上げるように上を向かせた。その刹那、泣きたいほど激しく胸を締め付けられ、気がつけば美羽の体を強く強く抱きしめていた。

「香月…美羽、美羽っ…!」

骨が軋むのではないのかと思われるほど強く抱きしめる。
やがてその腕の中でいつかと同じように美羽は意識を失っていた。




_____



あの夜と同じようにベッドで眠る彼女の姿を見ていた。その手をしっかりと握りしめたまま。
あれから気絶した彼女をマンションまで連れて帰ると、やむを得ずあかねに連絡をとった。かなり遅い時間で驚いてはいたが、大まかな事情を聞いた彼女はすぐに駆けつけてくれた。

迎えに行った時に見た美羽の姿はまるでボロ雑巾のようだった。顔色は血の気を失い、髪の毛はボサボサ。激しく転倒したのかスーツは泥だらけで膝の部分は一部破れている場所もあり、あちこち擦り傷があった。更にいつの間にか片方の靴が抜け落ちていたらしく、足の裏は血で滲んでいた。
そのまま寝かせることはできない、だが男である自分がやるわけにはいかない。だからあかねを呼ぶことにした。彼女なら美羽のことを知っているし、何よりもよき理解者であると判断したからだ。
大慌てでやってきた彼女は美羽の姿を見るなり涙を流し、それから着替えや傷の手当てなど献身的に世話をしてくれた。
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