愛を知る小鳥
笑うだけ笑って、食べるだけ食べて。そうしてゆったりした時間を過ごしていると、美羽は一旦リビングから出て行った。しばらくして戻ってくるなり、ソファーに座る潤の前までやってきて、とある物を差し出した。
「…? 何だ?」
「見てください」
不思議に思いながら差し出された物に手を伸ばす。そしてそれが何かを理解すると、潤は驚いて顔を上げた。
「これは…」
美羽は潤の顔を見るとゆっくり大きく頷いた。
「あの時、私を救ってくれたものです」
「…!」
潤の手に握られているもの。それは小さな女の子と若い夫婦が仲睦まじく笑い合った写真が入った写真立てだった。うさぎと森をイメージした作りの可愛らしいそれは陶器製で、多少古くなってはいるものの、とても綺麗な状態に保たれていた。
「それは私が持っている唯一の家族写真です。父は私の記憶にはほとんど残っていなくて…。父が亡くなってから母と写真を撮ることはありませんでした。まだ父がいた頃、私がうさぎ年だからってそのフレームを買ってくれたみたいで。父が亡くなってからはずっと母がそれを持っていたんです。でもあの日…母と向き合えたあの日、母がそれを私にくれたんです。あなたが持っていてちょうだいって。そしてあの時…私が夢中で手にしたのは…この写真立てでした」
「美羽…」
「私は偶然なんかじゃないと思ってます。父が…そして母が私を助けてくれたんだって、そう信じてます」
潤は静かに立ち上がると、目の前の体をそっと抱きしめた。
「あぁそうだな。偶然なんかじゃない」
大きな背中に手を回すと、美羽は耳元から聞こえてくる心地いい音に体を委ねた。
「…美羽。ご両親のお墓参りに行こう」
「…え?」
驚いて顔を上げたその頭をゆっくり撫でながら潤は微笑んだ。
「きちんとお礼をしに行こう」
「…? 何だ?」
「見てください」
不思議に思いながら差し出された物に手を伸ばす。そしてそれが何かを理解すると、潤は驚いて顔を上げた。
「これは…」
美羽は潤の顔を見るとゆっくり大きく頷いた。
「あの時、私を救ってくれたものです」
「…!」
潤の手に握られているもの。それは小さな女の子と若い夫婦が仲睦まじく笑い合った写真が入った写真立てだった。うさぎと森をイメージした作りの可愛らしいそれは陶器製で、多少古くなってはいるものの、とても綺麗な状態に保たれていた。
「それは私が持っている唯一の家族写真です。父は私の記憶にはほとんど残っていなくて…。父が亡くなってから母と写真を撮ることはありませんでした。まだ父がいた頃、私がうさぎ年だからってそのフレームを買ってくれたみたいで。父が亡くなってからはずっと母がそれを持っていたんです。でもあの日…母と向き合えたあの日、母がそれを私にくれたんです。あなたが持っていてちょうだいって。そしてあの時…私が夢中で手にしたのは…この写真立てでした」
「美羽…」
「私は偶然なんかじゃないと思ってます。父が…そして母が私を助けてくれたんだって、そう信じてます」
潤は静かに立ち上がると、目の前の体をそっと抱きしめた。
「あぁそうだな。偶然なんかじゃない」
大きな背中に手を回すと、美羽は耳元から聞こえてくる心地いい音に体を委ねた。
「…美羽。ご両親のお墓参りに行こう」
「…え?」
驚いて顔を上げたその頭をゆっくり撫でながら潤は微笑んだ。
「きちんとお礼をしに行こう」