愛を知る小鳥
「…でも、こんなに甘えっぱなしでいいのかなって思うこともあるんです」

「…どういうこと? 甘えさせてくれるなら思い切り甘えればいいじゃない。羨ましいくらいよ」

「あ、いえ、そういうことではなくて…」

「じゃあどういうこと?」

意味がわからないとばかりに首をかしげるあかねに、美羽はそわそわしながら辺りを見回し、近くに人目がないことを確認してから顔を寄せた。

「…ずっと待ってもらってていいのかなって…」

「え?」

「その…私がこんなだから、ずっと私に合わせてくれてて…でも、男の人にそんなことさせていいのかなって…」

言いながらどんどん小声になって顔も赤くなっていく。美羽が言わんとすることをようやく理解したあかねは、その様子に苦笑いした。

「いいに決まってるでしょ」

その言葉に美羽がパッと顔を上げる。

「まぁ男の本能から言えば結構我慢が必要な状況なのかもしれないけど、専務にとってそれ以上に美羽ちゃんが大切なのよ。どうでもいい相手にそんなことしないに決まってる。自分の欲求よりあなたを大切にしたい、それが彼の想いってこと。男女の繋がりって体だけじゃ得られないものがあるのよ。素敵なことじゃない。」

「あかねさん…」

「今は焦らなくていいのよ。専務はあなたとの未来を描いてるから今は長い人生の一時に過ぎないの」

「未来…」

「そう。それに、遅かれ早かれ必ずそうなる時が来るんだから、そしたらその時は思う存分彼のやりたいことをさせてあげればいいのよ。でしょ?」

悪戯っぽく笑うあかねに思わず顔が赤くなるが、それぞれの優しさが心に染み入りじんわりと温かくなってくる。美羽ははにかみがら大きく頷いた。

「…はい。その時は頑張ります」

「そうそう、その心意気!」

わずかな休憩時間は笑い声と共に温かく過ぎていった。
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