愛を知る小鳥
少しだけ体を離して見えたのは、どこかバツの悪そうな彼の顔。

「お前の言ってることが俺の痛いところをこれでもかって突いてくる」

「え…それじゃあ」

潤は困ったような顔で笑うと、コツンと美羽の額に自分の額をあてた。

「お前の言うとおりだよ。一生会わなくていいと言いながら、親父が倒れたって聞いて激しく動揺してる自分がいる。自分の中でとっくに消化できたと思ってたはずなのに…実際は全然駄目だったんだな」

「潤さん…」

潤は美羽の腰に回した手に力を込めた。

「…一緒に行ってくれるか?」

「え?」

目線を美羽の目の高さまであわせると、どこか不安げに瞳が揺らいでいる。

「俺と一緒に会いに行ってくれるか?」

美羽は一瞬だけ驚いた顔をしたが、次の瞬間には満開の笑顔で頷いた。

「もちろんです。喜んで」

その笑顔を見るなり潤ははぁ~っと盛大に息を吐き出し、美羽の肩に顔を埋めた。そんな彼がまるで子どものようで愛しさが募り、思わずいい子いい子してしまう。

「…なんだよ」

上目遣いで口を尖らせる姿に母性本能がくすぐられまくりだ。

「いえ、潤さんがあまりにも可愛らしいのでつい…きゃっ?!」

最後まで言い切ることは叶わず、気が付いたときにはベッドに組み敷かれていた。見ると一転、潤の目が妖しく光っている。

「じ、潤さん…?」

「リードされてばっかりなのも性に合わないからな…?」

「えっ、えっ?!」

どこか照れたような顔で不敵に微笑むと、そのまま潤の体が覆い被さってきた。
この夜はいつも以上に熱く翻弄されたことは言うまでもない___
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