愛を知る小鳥
「はぁ、由岐先輩って凄くいい人なんだけどこういうことだけはいつも困るな…」


自分のデスクに座りながらふぅっと溜息をついた。



香月美羽 22歳。

一部上場企業としては珍しく短大卒で採用され、今は総務部で日々真面目に仕事をしている。見た目は控えめに見ても可愛らしく、もてる分類に入るだろう。
仕事も至極真面目に取り組み、嫌味がなく、
男女問わずに好感をもたれている。
当然ながら彼女に好意を抱く男性陣も少なくはない。


のだが___


異性関係に関しては入社当時から鉄壁のガードが張られており、合コンはおろか浮いた話の一つすら噂になったことはない。
普通に可愛らしいルックスだが、装いは限りなく地味。
薄化粧に肩甲骨までの髪を一つに束ねただけのスタイル。
今時珍しくカラーリングもしていない。
眼鏡をかけてスーツは常にパンツスタイル。

恋愛に一切興味はないという彼女なりの意思表示の一つなのだが…
一見ださすぎるが、彼女の小柄な体型と眼鏡でも隠しきれていない大きな黒目。本人の狙いとは裏腹に、逆にその素朴さがいい!と遠巻きに狙っている男性社員は少なくなかった。
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