愛を知る小鳥
「ん…」

部屋に射し込む光に目を細めながらぼんやりと部屋を見渡した。6畳一間の狭い空間にはひっそりと蛍光灯の光が灯っている。

「夢か…」

まだ完全に覚醒しない頭を押さえながら立ち上がり部屋の電気を消す。灯りが消えてももう充分に室内は明るい。
そしてキッチンにあるケトルにスイッチを入れ、その間に洗面台で身なりを整える。一通り軽く済んだらハーブティーを手にほっと一息をつく。
美羽が18歳でこの部屋に住み始めてからずっと続けてきた日常の風景だ。

ここに来てからもう4年経ったのか…
長かったのかあっという間だったのか、どっちなんだろう。
熱いハーブティを少しずつ口にしながらぼんやりとそんなことを考える。あの時はただただ必死で、数年後の自分が専務秘書をやっているなんて誰が予想できただろうか。

「なんだかここ数ヶ月は激動だったな…」

波風を立てずひっそりと生きてきた自分にとって、最近の目まぐるしい変化にまだまだついて行けていない。それでも気づけばそこにそれなりに順応している自分もいて、忙しいながらも充実した日々を送れていた。

巡る日は早く、美羽が潤の秘書になってから3ヶ月が過ぎようとしていた。
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