愛を知る小鳥
「じゃあここで。昨日から色々と本当にありがとうございました。お借りした洋服はあらためてお返ししますので」

美羽は深々と頭を下げ、顔を上げるとじっと自分を見つめる潤と目が合った。しかし見ているだけで何も言わない彼に疑問を感じ首をかしげる。

「あの…」

「これから先」

「え?」

「この先もしお前が何か悩んだり困った時があったら、その時は迷わず俺に相談しろ。迷惑だなんて思わないから」

「専務…」

「お前には色々助けてもらってるしな。困った時はお互い様だ。いいな?」

思ってもいなかったその言葉に胸が熱くなる。
だが泣いてはいけない。美羽は笑顔で頷いた。

「…はい。ありがとうございます」

潤も満足そうに頷くと、美羽の手のひらに何かを握らせた。

「俺のプライベートの番号が書いてある。困った時はいつでも連絡しろ」

驚きの余り、返す言葉が見当たらない。

「じゃあまたな。ゆっくり休んで仕事に備えろよ」

潤はそう言って車に乗り込むと、軽く手を振って帰って行った。その後ろ姿を見送りながら、美羽は生まれて初めて味わうその感情をどう扱えばいいのかわからずにいた。
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