だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版
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「大きなプロジェクトですね」
会議は時間通りに終わった。
白熱していたはずなのに、しっかりと締められるというのは、仕事が出来る証だと思う。
みんなが出て行った会議室を片付けながら、ため息のように言葉が落ちた。
零した私の言葉を、水鳥さんは小さく笑って聞いていた。
「ここまで大きなプロジェクトは初めてでしょう?」
ホワイトボードの鮮やかな文字を消しながら水鳥さんは私に問いかけた。
「初めても何も、私がこんなプロジェクトに参加するなんて思ってもみませんでした。それに、主任昇格の話だって、とても急だったので・・・」
正直不安だった。
こんな気持ちのまま『管理職』の階段を上ってもいいのかどうか。
主任になった途端に、与えられた仕事にやりがいを感じなくなってしまったら?
私は、飽き易く移ろい易い方だと思う。
真剣なはずなのに、いつもどこか冷めていて。
大切なはずなのに、手放すことに抵抗がない。
そんな私は、自分の居場所がいつも分からなくなってしまうから。