翼~開け放たれたドア~
肯定されてもやっぱりわからない。

彼女が誰なのか。

私は何を忘れているの──?




『ここよ』

ハッと、俯いていた顔をあげる。

目の前には、

「……ドア?」

『そう。ここから先はどこまでも大きな世界が広がっている』

そう言われて上を見上げれば、何本もの黒い銀みたいな棒に囲まれている。

自分が籠の中にいるということはすぐにわかった。

また、ドアへと目を移す。

開いたそれの向こうは、なぜか何も見えない。

ゆっくりと、後ろを振り返る。

──“黒と赤”。

倒れた人と、赤い血がそこにはあった。

だけど、私は普通だった。

罪を償うためにしたことだから。











< 165 / 535 >

この作品をシェア

pagetop