翼~開け放たれたドア~
「…しょうがないよ。知らなかったことだし。
それよりも春輝を探すことが優先でしょ?」

直は俺の肩を軽く小突いた。

「……わりぃ」

俺は小さく呟くことしかできない。

こんなにも自分の無力さを悔やんだことはなかったと思う。

「…空夜」

不意に直は真剣な顔をした。

「……春輝は、俺たちに言ってないことがあるよ」

春輝が?

「もしかしたら、空夜は春輝を守りたいなんて思わなくなるかもしれない。
俺は、この気持ちは変わらなかった。
…あんまり信じたくはなかったけど。
空夜は変わらない?」

は?そんなの…

「あいつが何を抱えていようが、守りてえ気持ちが変わるわけねぇだろ?」

なに当たり前のこと言ってんだ。

言いきる俺に、直は安心したように微笑んだ。

「そっか。じゃあ安心して言えるよ。
といっても、安心してる場合じゃないけど」

そう呟くと、直はふと空を見上げた。

「間違いかもしれない。
けど、昨日のことをかんがえれば、そうとしか考えられないんだ」
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