翼~開け放たれたドア~
「い…ったぁ…」

ガンガンと痛みが響く頭を押さえつつ起き上がる。

ギシ…とベッドのスプリングが音をたてて私は、変だな、と思い辺りを見渡せば。

「な、んで…っ」

あの頃と同じように、部屋で一人きりで寝ていたことを知る。

ベッドとテーブル、それから棚や窓があるこの部屋。

ベッドとテーブルしかなかったあそこよりも物があったし、なかった窓もあったけど、私にあの部屋を連想させるには十分だった。




“お前のその目、その髪が、駆け落ちの子供である証拠なんだよ!

“駆け落ちの子供ごときに”

“この恥さらしが!なんでこんな問題も解けないんだ!”

脳裏に蘇る罵声と暴力。

頭がボーッとして、身体がだるくて。

「ご、めなさ…ごめんなさい…っ」

無意識にいつもの言葉を呟く。

“お前は、いらねぇ子なんだよ”

お願い。お願い。

そんなこと言わないで。

私を産んでくれたお母さんを。

生まれてきた私を否定しないで。
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