翼~開け放たれたドア~
「…どうしてだ?」

「だ、って…、必要と、されな……のは、辛いから……!
おか、さん…いない、し…っ、わ、たしいらない子、だし…っ。
理由、がほしかった…っ!!」

「……そうか」

「生きても、いいよって…!
ここに、いて、もいいよって、いう、理由、がほし…っ」

あぁ、ホントに何言ってるんだろう?私。

そんなこと思うのに。

嗚咽混じってるから聞き取りづらいそれに、空夜は優しく相槌をうってくれる。

それだけで、嬉しくなっちゃうんだから仕方ない。

泣きじゃくる私の頭を撫でつつ、空夜は言葉を紡いだ。

「やろうか?」

…なにを?

涙を流しつつもきょとんとする私がおかしかったのか、空夜はクッと笑ってから続けた。

「生きる理由。
……ほしいならくれてやるよ」

一瞬。

…いや、随分長い間。

周りの音が聞こえなかった気がする。

時が、止まったかのように。
< 402 / 535 >

この作品をシェア

pagetop