翼~開け放たれたドア~

言葉という名の籠

「──…wing」

──ドクンッ

さっきとは違う、嫌に大きく高鳴ったそれ。

「あ…」

後ろから聞こえた赤城啓吾の声。

私を呼ぶ……その言葉。

「……忘れたんですか?君は…」

「…や、だ……、言わないで…」

ダメ。言っちゃダメだよ。

「篠原シゲルに言われたのでしょう?
俺は、もしものときのためにあの人から全て聞いてるんですよ」

「い、いや……っ」

「おい、春輝?」

空夜の焦った声が聞こえた気がしたけど、反応できない。

誰よりも冷たい人から言われた、何よりも残酷な言葉。

そんなの、考えたくもないの。

お願い、言わないで。

「ねぇ、そうでしょう?wing…」

「止めて…っ!」

「君が一番わかってるんでしょう?」

「言わないで……!!」

それ以上は、聞きたくないよ。

「おいっ!それ以上はもう言うな!!!」

雷の怒鳴り声が聞こえた。

するとふわりと、大好きな暖かな体温が二つ、私を包んだ。

「雷…っ、空夜…っ」

「春輝…」
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