翼~開け放たれたドア~
「……嘘、だろ…」

蓮はそう呟き、窓に手をついて春輝のことを凝視している。

雷さんは悔しそうに「…また、守れねぇのかよ…っ!」と吐き捨てるように言った。

グシッと手で目元を乱暴に拭うが、その瞳からは涙がボロボロと落ちていく。

龍也さんも、メガネの奥でいつも光らせている瞳を潤ませたかと思うと、初めて泣き顔を見せた。

皆が皆…泣いていた。

なぁ、春輝。聞こえているか?

こいつらの心が泣く音が……。

おまえがいなくなることを悲しむ奴らが、ここにはいっぱいいるんだぞ?

寝ている場合なんかじゃねぇ。

早く起きて、俺の名前呼べよ……。

……そんな、虚しいだけの願い。

頭では分かってるはずなのに、どうしてもそれを受け入れられない自分がいる。

信じたくなくて。嘘だって言って欲しくて。

でも、こんなテレビで見るような出来事が、身におこっていることは確かで………。

“──空夜”

あいつの声が聞こえた気がして、廊下の窓を見たけど、病院についたときのように、夕日の日差しが残ってるわけもなかった。

あいつの心も……、最初はあんなんだったんだろうか。

それでも、何も映そうとしない瞳さえ、愛しいと思ってしまう自分がいて……。

そして俺は、春輝に恋したんだ…。
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