明日、嫁に行きます!
「あれ? お父さんから聞いてませんか?」

「なにを?」

「花嫁修業の一環として、これから一緒に暮らしていただきます」

 ナニ―――――っ!?

 それこそ、人身御供ではないか!!
 ウチの親はなに考えてんだ!?
 あまりの理不尽さに一瞬言葉を失ったが、次の瞬間、怒りが爆発した。

「バカ言わないでよ、なに考えてんの!? 会って間もない男となんて一緒に暮らせるわけないじゃない! 非常識だし不愉快だわ!」

 ふつふつとした怒りを抱えたままきびすを返し、大通りに向かって歩き出そうとした時、頭上から降ってきた情け容赦のない冷たい声に、私の足がピタリと固まった。

「帰るんですか。本当に、それでいいんですか?」

 ―――お前の家族の命がかかってるんだぞ。

 そう言ってるでしょ、今。
 脅かしてるんでしょ、射るように私を捉えたその眸で。
 表情の乏しい彼の顔には冷笑が浮かび、愉しげに揺れる双眸で私の反応をうかがってるんだ。

「い、いい加減にして。もうたくさん。お金だったら私が死ぬ気で稼ぐわよ。あんたなんか絶対頼らない」

 威圧という名の攻撃に、少したじろいでしまったけれど。
 負けるわけにはいかなかった。
 握りしめた拳に力がこもる。

「18の小娘に一体何が出来ると言うんですか」

 ――――3億の融資はすでに実行されているんですよ。

 その言葉に凍り付いた。
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