明日、嫁に行きます!


 厚ぼったく熱を持つ瞼を、無理やりこじ開けた。
 カーテンの隙間から見える空は、茜色に染まっていた。
 一日のほとんどをベッドで過ごしてしまった事実に愕然とする。
 鷹城さんの腕は、私の躰を包み込むように抱いたまま。
 切れ長で鋭利な光を放つ双眸は、今は瞼で閉ざされていて。薄く開いた唇は、まるで子供のように無防備なものだった。
 さんざんおもちゃのように扱われた身体は、重くて身動きすらままならない。
 けれど、そこに彼を嫌いになる理由が見当たらず、苦笑が漏れた。
 こんなにめちゃくちゃに扱われても、嫌いになれないって。

 ――――私って、やっぱりダメンズウォーカー。

 はぁーっと深い息をつく。
 彼が昔のことなんて関係なく、私のことを好きになってくれたら良いのに。
 そうすれば、何に遠慮することなく、私はずっと彼の傍にいられるのに。
 でも、12年も昔にもらった天使像を、あんな立派なガラスケースに仕舞い込んで大切にしてきた彼の想いに、私が勝てるとは到底思えなくて。

「……貴方は何を考えてるの?」

 小さな小さな私の問いは、隣で眠る彼の耳には届かなかった。

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