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私が嬉しかったと言うと、貴一さんは少しだけ照れ臭そうに「そっか」と零した。


(きっと電話の向こうでも照れ臭そうな顔してるんだろうな……)

そう思うと、無性に貴一さんの顔が見たくなって、お腹の奥がむずむずした。

電話で声が聞けるだでも十分だったのに、お泊まりとか貴一さんが近くにいる事が最近多かったせいか声だけじゃ物足りなくなる。



「……貴一さんあのね、」

『うん?』


「すき」


貴方が好きだと、電話越しに告げる。

こんなこと本当は言うつもりなかったけど、またあの背中に抱き着きつきたくなるような衝動に駆られて、勢いに任せて言ってしまった。

顔が見れないんだから言葉に頼るしかなくて。ストレートに告白すると、電話の向こうでは少しだけ沈黙。


(微かにだけど息を飲む超えが聞こえたから、貴一さん驚いてるかも……)


沈黙の間、そう貴一さんの姿を想像して笑みが込み上げそうになる。


(驚いてるより、もしかしたら顔赤くして照れてるかも……)

というのは私の希望。




『奈々ちゃんのその真っ直ぐな性格がおじさん羨ましいよ』


沈黙のあとに。へらりと小さく笑いながら、貴一さんにそう返される。



「貴一さんは?あたしのことどう思う?」

『可愛いって思ってるよ』


さらりと返された。

可愛いって言われたけど、好きの答えははぐらかされる。どうしても貴一さんは私のこと好きって言ってくれない。


キスだってもうたくさんしてるのに。

貴一さんは、やっぱりずるい……。





「きーちさんのばかー」


『ふーん、そんなこと言うんだ……?』


いつもの調子で馬鹿と零すと、電話の向こうからは低い声。



「……っ!?」


意地悪な、なにかよからぬことを企んでそうなSっ気のある声音。

急にそんな声出されて私が思わずひっと息を止めると。クスリと色っぽく笑みが零される。




『ねぇ、奈々子……』


夜の匂いを纏った色っぽい声で囁いた。

ただ名前を呼ばれただけでドキドキと心臓が一気に激しく音を立てた。
心臓の音が邪魔するかのように、周りの音が聞こえなくなる。



『奈々子……』

貴一さんがもう一度呟いた。




『    』




微かに。


微かに「好きだよ」と、

言った気がした……。

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