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2/ February

チョコレートと金平糖

■ □ ■ □



2月に入ってすぐの。
なんでもない平日の夕方のこと。


駅前のカフェで、たまたま貴一さんと出会ってしまった。



「久しぶり」

「お、おひさしぶり、です……」


2週間ぶりくらいかな。電話とかメールでやりとりは続いていたけど、直に会ったのは結構久しぶりだった。


駅前のカフェは一人掛けの席の手前がガラス張りになっていて、外の景色がよく見える。
あったかいカフェラテを飲みながら何気なしに外を眺めていると、仕事帰りの貴一さんがたまたま通りかかったわけで。


目が合うとすぐに貴一さんが店内に入ってきて、それで当たり前のように私の隣の席に座った。

本当に偶然で、不意打ちだったから。
緊張して顔が変になる。

貴一さんはブラックのコーヒーを注文してて、その横顔がなんだかとってもかっこよく見えて私はすごくドキドキした。

食べかけのチョコケーキにフォークを刺したりしてドキドキを誤魔化してると、貴一さんがすいっと私の顔を覗き込んだ。


「そういえば、お菓子有難う」

「……へ?」


下から見上げるみたいに顔を覗き込みながら貴一さんが言った。咄嗟の事になんの話かよくわからなくて間抜けな声が零れる。


「お菓子、送ってくれたでしょ?この前、実家に」

「え、あぁ、うん」


そういえば、そんなこともしたっけ。と、少し前の出来事を思い出す。

三学期に入ってすぐ、貴一さんの実家にお礼のお菓子とお手紙を送ったことがあった。

お菓子は、小ぶりな金平糖の詰め合わせを選んだ。綺麗な淡い色をした金平糖は、フルカワの器のイメージに似てたから。


「親父も母さんも、喜んでたみたいだよ」

「ほんと?よかったぁ」

「うん、親父が特にね」

「隆雅さん、金平糖好きなの?」

「うん、まぁ好物のひとつではあるけど……。実はね、新作のイメージが出来たんだって」

「新作?って、 フルカワの食器の?」

「うん。10年ぶりくらいに。キャンディポットやシュガーポットみたいな、金平糖を入れる小さな容器を作るんだってさ」


貴一が聞かせてくれたその話にきゅんと胸がときめいた。私の送った金平糖でそんなことになってるなんて思ってもみなかった。

小さな白い陶器に、綺麗な金平糖。
その組み合わせは想像しただけでもすごく可愛いと思うから。


「年甲斐もなく張り切ってて大変だよ」

そう言って貴一さんがわざとらしく顔を歪ませる。その仕草が可笑しくて、私も思わず笑ってしまった。

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