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(ずるい……)


私が逃げれるわけないのわかってて言うんだから。貴一さんは本当に狡い大人だ。




動けずにぎゅっと固まる私に、貴一さんはクスリと小さく笑んだ。

そうして、そっと頭に手を添えられる。撫でるように。捕まえるみたいに。


そのままコツンと、おデコとおデコがぶつかる。

柔らかい貴一さんの髪の毛がかかるくらいに顔が近くて、すごくすごく恥ずかしい。それなのに、恥ずかしいのに、眼が逸らせなかった。


貴一さんの眼が、とても綺麗だったから。



「逃げないんだ?」


「きーちさんが……、

離してくれないからだよ」


そう言い訳すると、貴一さんはまた小さく笑った。微かな吐息が鼻にかかって、目眩がしそうなほどくらくらしちゃう。



(キス、されちゃうんだ……)


そう思った時にはもう唇が触れていた。



初めは、そっと触れるように。

それから、啄むように何度も。何度も。



そうして、

ぬるりと喜一さんのが私のなかへ侵入してくる。



ゆっくりと、探るように。


どんどん深く、深く。奥まで。




「……っん」



コーヒーの匂いがした。

抵抗なんてできなかった。


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