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古川家の人々

■ □ ■ □


かくして貴一さんのご実家での3日間のお泊まりはスタートしたわけで。


(今日から3日間、貴一さんとひとつ屋根の下。ずっと一緒に過すんだ。

心臓もつかな、あたし……)






「暗くなってきたね、そろそろ宴会始まってる頃だから行こうか」

「宴会?」


窓の外の空の色を気にしながら、貴一さんが立ち上がる。手を引かれて私も一緒になって立ち上がるけれど、宴会と言う言葉にきょとんとなる。


「親戚中集まってるからね。みんな集まると自然と大宴会になるんだ」

明日はもっとすごいよ。
と付け足して貴一さんが言う。

私には未知の領域すぎて少し気が引ける。親戚同士の集まりに、よそ者の、さらにはこんなちんちくりんな女子高生が急に参加していいのかなと不安に思う。



「みんな奈々ちゃんに興味津々だと思うから大歓迎されると思うよ」

「興味津々?」

「たぶん母さんが親戚中に伝えてるよ、僕のお嫁さんが来てるってね」

「えっ!?」

「じゃ、行こうか。お嫁さん」

「〜〜っ!?」


悪戯っぽく囁かれて絶句。
お嫁さんと呼びながら貴一さんがするりと私をエスコートする。


「ま、まだ婚約者ですっ!それに、婚約者のふりです!ふり!」

小声で怒鳴って腰に回されている貴一さんの手から逃れようとするものの、憎たらしいことに貴一さんはびくともしない。


「強情だねー、奈々ちゃんも。

ここまできたら本当に僕のお嫁さんになっちゃえばいいのにー」

また貴一さんがからかうように言う。ちゅっと薬指にはまった指輪にキスを落としながら。

冗談だってわかってるのに、私はやっぱり顔を赤くしてしまうわけで。



(やっぱり心臓もたないかも……)

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