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案内してもらったおかってに入ると、藤子さんを中心に奥様方がお正月の料理作りに大忙しのようだった。


「あら、那由多に奈々子ちゃん。二人揃ってどうしたの?」

藤子さんが那由多さんと私の姿を見つけると作業の手を止めて声を掛けた。

「あの、昼間、お土産渡し忘れてたので」

つまらないものですが。
と、私は持っていた紙袋を前に差し出して藤子さんに渡した。


「あらあら、わざわざありがとう」

そうにこりと笑って受け取ってくれたのでほっとなる。周りの女性陣からも「ありがとー」と声を掛けてもらえたのでとっても嬉しい。



「それで那由多は?なにしに来たの?」

「氷取りにきた。あと焼酎か日本酒、もう無いの?」

「日本酒は明日のお神酒のしかないから駄目。焼酎なら、たしか麦がまだ……」

「芋がいい」

「わがまま言わないの」


マイペースな那由多さんに藤子さんが溜息をひとつ零す。それからお酒用の氷を用意して焼酎の瓶を渡していた。

そうして受け取った那由多さんはのろのろとおかってから出て行った。やっぱりなんだか不思議なお兄さんだ。



「那由多君、相変わらずねぇ」

「まったく、貴一以上になに考えてるんだかわからなくて困ったものだわ」


やれやれと藤子さんが溜息交じりにそんなことを話している。


「あの、那由多さんって……」

いったい何者?
そう思わず呟くと、


「本家の末の子よ。つまり貴一さんの弟」

と、藤子さんと一緒に料理を作っていた気の良さそうなおばさんが教えてくれた。

貴一さんの弟。
那由多さんが。

その話に少し驚いた。
似てるなとは最初から思ってたけど、改めて聞かされるとなんだか意外だった。


古川家の人々には謎が多そうだ。


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