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「那由多の本当の親はね……」

「えっ!?ちょっ、いいよっ!!言わなくてもっ」


那由多さんと同様に。さらりと重大な言葉を吐こうとし出した貴一さんを私は慌て止めた。

だって、こんな大事なこと他人の私がうっかり聞いていいはずないから。


「いいの?知りたそうな顔してるけど」

「えっ!?」


(うそっ!?あたし、そんな下品な顔してた!?)

そう焦る私に、貴一さんが「冗談だよ」とからかうように笑う。


「……多分ね、那由多は奈々ちゃんに知ってて欲しいと思ってるから」

「那由多さんが?あたしに?」

「うん。じゃないとアイツがこんなこと自分から言い出したりしないだろうし」


そこまで話してから貴一さんは私に問いかけた。「聞く?」と。


(もし、ここで聞きたくないって言っちゃったら、それは那由多さんの話してくれた勇気を無駄にすることになるのかな……)

そんなことを考えると胸が痛む。


やっぱり貴一さんは狡い。
私はその問いかけに頷くしか出来ないじゃない……。

まんまとこのおじさんの思惑通りに頷くと、貴一さんも満足気に微笑んだ。




再び縁側に腰掛けると、貴一さんはぼんやり前を向いたまま口を開いた。


「……那由多の父親は、僕の祖父だよ」


そう言って少しだけ淋しそうに笑って。



「爺さんと愛人との間に出来たのが那由多で。爺さんが亡くなってからこのことが発覚して、それで、こっちの家で引き取った時に親父が養子にしたんだ」


貴一さんが早口にそう話す。


「そっか……」

「うん。それだけ」


なんてことない風に貴一さんが言う。

私は俯いたまま顔が上げられなかった。



「ごめんね、やっぱ重かったかな」

そう呟いて貴一さんが私の頭を抱えるようにして抱きしめる。


重くなんてない。
辛くなんてない。

話してくれて、信用してくれて、
本当に嬉しかった。



だけど、涙が止まらなかった。


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