ヒカリ


すっかり暗くなった夜道を歩く。
拓海はゆきのボストンバッグを持ち、並んで歩いた。


「すいません。こんなことになって」

「ゆき先生のせいじゃないから」

「楽しいこともしたかったのに」
ゆきはそう言って、拓海を見上げ笑った。


ゆきのアパートから徒歩で二十分くらい。
電車で行くと一駅らしいが、徒歩の方が直線距離にすると近いようだ。


友達のアパートは比較的新しかった。
コンクリートうちっぱなしの外壁がおしゃれだ。

エントランスでチャイムをならすと「今あけるね」と女の子の声がした。
自動扉が開く。


「ありがとうございました。もう大丈夫ですから」
ゆきはエントランスでそう拓海に告げた。

本当は玄関の前までついていきたかったけれど、その気持ちをぐっとこらえ「またね」と手をあげた。


帰り道、拓海は早足で歩いた。
恐ろしい記憶に追いつかれないように、力一杯歩いた。
拓海は自分の手を見る。


両手は血に濡れていた。

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