氷と風
「すみません…」
この無表情なお偉い先生がどこまで怒っているのかが量れなかったので、すぐさま謝っておいた。
再び場内が暗くなり、次の学者がステージに立って発表を始める。
暗くなったのをいいことに、私は隣に座る先生の横顔を盗み見た。
(うん。ハッキリ言うと有り得ない)
そう。彼は学者のイメージをぶち壊すくらいの美形なのである。
そんな彼をマスコミが放っておくはずもなく、彼が論文を書き上げる度にはやし立てている。
テレビ出演の依頼も多い(先生は余程重要だと考えない限り断っている)。
しかもメディアへの出演交渉や講演などの受付は助手である私がほとんど応対しなければならないので、仕事は結構忙しい。
(助手っていうからもっとラクだと思ってたのにな~)
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