涙雨[ナミダアメ]
メイカと別れ、
家に帰るとリビングにタバコをくわえた秀がいた。


秀が帰って来たのは、
1週間ぶり。


秀の仕事は、証券会社の経営者で仕事で家にいないことが多々ある。


「雫、どこ行ってた?」


1週間ぶりに会えたのに、秀の機嫌は悪いようだ。


低い声が機嫌の悪い証拠。


「メイカと大学帰りにカフェにいたの。」

「本当にか?
携帯に何度も連絡したんだけど。」


その瞬間冷や汗が出た。

携帯には、着信が10件入っていた。


携帯を気にしていなかったから気づかなかったのだ。


「気づかなかったの。
ごめんね。」


そう言うも、彼の機嫌は治らないようで。


「いつもいってんだろ!
携帯は気にしてろって!
だいたいお前、派手な格好して男に色目使ってたんじゃねえだろうな!」


「そんなことないわよ!私だって…「うるせえッッ!!」


ガンッッと灰皿が壁に当たり、灰と吸い殻が散らばった。


そしてジリジリ近づいてくる。


怒りに満ちた秀の顔。


「ごめんなさい!!」


「何で俺の言うことを聞かねえんだ!
俺以外の前では派手な格好をするなと言っているだろうが!!」


バシッと顔に痛みが走った。


私が悪い。


携帯に気がつかなくて
不安にさせてしまったから。


秀がいないからといって
派手な格好をした私が悪い。


だから抵抗はしない。


ぐいぐいと爪が食い込むほど腕を捕まれる。


「秀、ごめんなさい。
私が悪かったわ。」


「分かればいいんだ。」


すっと捕まれていた腕がほどかれ、彼もいつもの顔に戻った。


そして、私を力いっぱい抱き締めた。


「痛いことしてごめん。
でも心配なんだ。」


「わかってるわ。
心配かけてごめんなさい。」


「いいんだ。
それより、雫にプレゼントだよ。」


そう言って、ブランドのかばんを渡された。



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